最近テレビで猫探偵の企画を目にしました。脱走した猫を捜索するというものです。すると、ふっと懐かしい記憶がよみがえってきました。
「そういえば、うちの子も脱走したことがあったなあ。」
実家では数年前までモモ(仮名)という猫を飼っていました。モモが来たのはまだ生まれて数か月の頃。当時、実家暮らしだった私にとってのモモは癒してくれる存在でもありわが子のような存在でもありました。
もちろん、両親もすっかりメロメロです。みるみるうちに実家は猫中心の生活になりました。
そんな我が家のアイドルが突然いなくなったのです。まだモモが1歳にもならない頃のことでした。
モモの脱走に不安がよぎる
モモは植木の水やりをする一瞬をついて脱走しました。
家族で手分けしてモモの名前を呼びながら探したり、近所の人には庭や車庫などにモモが隠れていないかをみてもらったりしたのですがどこにもいません。
おそらく、モモはほんの好奇心から少し外に出ただけだと思うのです。少しいつもと違う場所を探検して、気が済んだらいつもの定位置でお昼寝しようという感じですね。
それなのに家に帰れなくなって不安になっているのではないかと心配でたまらなくなりました。
しかも、モモは家の中での生活しか知りません。そんな子が外の世界で生きていけるのかと思うと心配はどこまでも続いていきます。
水や食料を自分で探すことができるのだろうか。
雨風をしのいで眠る場所を確保できるだろうか。
交通事故にあったりしないだろうか。
ほかの野良猫からいじめられたりしないだろうか。
私たち家族にできることはモモがいつでも家に入れるように人目につかない場所の窓を少しだけ開けておくことと、外出する時にモモの名を呼んだり目を皿のようにしてその姿を探したりすることだけでした。
しかし、何日過ぎてもモモは帰ってきません。
そうするうちに、私の思考もだんだんと突拍子もないものになってきました。停車中のトラックにうっかり乗って遠くの町まで行ってしまったのかもしれない、猫さらいに誘拐されたのかもしれないなどです。それだけ私も追い詰められていたのでしょうね。
猫好きネットワークの力は偉大だった
結局、モモは実家の近所で見つかりました。脱走から約一か月後のことでした。
実家から歩いてわずか5分。駐車場の片隅にちょこんと座っていました。
発見のきっかけになったのは近所の猫好きの人からこう言われたことです。
「最近、隣町の駐車場に妙に人懐っこい猫がいると聞いたけどモモちゃんかもしれないよ。一度様子を見に行ってみたら?」
その頃、地域猫にエサをやる活動をしている人たちの中で新入りの猫が妙に人懐っこいと話題になっていたようなのです。エサをやろうとしたら人の膝の上に乗っかろうとしたり食べ終わったら人の足元に頭をすりつけてきたりするのだとか。これは野良猫ではなくて誰かが飼っていたにちがいないというわけです。
近所の人はその猫の情報をもう少し詳しく聞いてくれていました。白猫、赤い首輪、どんな色や形の模様があるか、しっぽにある縞の数。すべてがモモの条件に当てはまりました。
すぐさま探しにいくと、駐車場にモモはちょこんと座って日向ぼっこをしていました。その姿を見た時、どれだけほっとしたことでしょう。
帰ってきたモモの変化
多くの方の協力もあり無事にモモは我が家に帰ってきました。ただ、やはり脱走前と違うところもいくつかあるんですよね。特に変化があったのは次の二つでした。
薄汚れた見た目になっていた
一つ目の変化は外見がかなり違うということです。モモの毛色のベースは白なのですが、土やアスファルトの上に寝転がる生活だったからかグレーとも茶色ともつかないような薄汚れた色味になっていました。
また、全身の毛がベタッとしたような質感になっていました。整髪料をつけすぎた髪の毛のような脂っぽい感じです。
普段歩く道にモモはいたのになかなか見つからなかったのはこれが一因かもしれません。
白くてサラサラの毛のモモを思い浮かべて町中を探していた私にとっては、その姿はかなりギャップがありました。もしもモモが友人の飼っている猫だったとしたら、脱走後の姿を見たら同じ猫だと見抜けない可能性が高かったと思います。
幸いにも駐車場に行って「モモ!」と呼んだだけでこちらに歩いてきてくれました。でも、もし呼んでも寄ってこなかったとしたら……
その時は見た目からモモかどうかを判断しなければなりません。ペットの写真を撮ってその記録を残すことの大切さをこれほど感じたことはありませんでした。
ペットを飼っているとかわいい姿や表情を撮りたいと思いませんか? すると、正面からの写真が多くなりがちに。
でも、後頭部とか背中とかしっぽとか肉球とかの色や模様が脱走した子の手がかりになることもあります。いろんな角度から撮影するのって実は大切なんですよね。
お留守番ができなくなっていた
もう一つの変化はお留守番ができなくなっていたことです。家族の気配がないと大声で鳴くようになりました。やはり脱走後の外での生活はモモにとって不安でいっぱいだったのでしょう。
しかも、その鳴き方がなかなか凄まじいのです。
「ブニャー」
鳴き過ぎて声がれしたような感じです。そんなに鳴いていると声が出なくなるのではと心配になるほどでした。
さらに問題なのは視界に入る範囲に家族がいないとモモが鳴きやまないということです。
たとえば、リビングに私とモモがいたとしますよね。モモが安心して寝ているとそれは何かをするビッグチャンス! さあ、今のうちにと目的の場所へと急ぎます。
しかし、モモはそれを見逃しません。トイレに入ったと思ったらドアの外で「ブニャー」。お風呂の外で「ブニャー」。誰もいないのが恐怖であるかのように必死に後ろをついて回るのです。
また、脱走後の数年間はトイレ以外で粗相をしてしまうことも増えました。脱走前はそんなことは一度たりともなかったのに。
脱走した当時はまだ今ほどインターネット上には情報がなかった時代。そのため、モモの行動の意味はわかりませんでした。後に調べると「分離不安」というものもあるそうで、モモはそれだったのかもしれませんね。
モモと再会できて良かった
モモの脱走騒動は今から20年近くも前のこと。そして、モモも虹の橋を渡っていきこの話も記憶の彼方にありました。
でも、猫探偵の番組を見た時に懐かしい思い出としてよみがえるのはモモと再会できたからなのでしょう。会えないままならきっと苦い記憶となっていたでしょうから。
モモの脱走騒動後に感じたことは3つありました。
「可愛い姿を撮影するだけではなくて、しっぽの模様や肉球の色など、外見の雰囲気が変わっていたとしても特定につながる部分を記録しておくことの重要さ」
「地域の人や猫好きのコミュニティの方に協力してもらえたことの心強さとありがたさ」
「猫の脱走期間が1か月近くになっても猫の生命力を信じて待つことの大切さ」
どれか一つでも欠けていたらモモとの再会はかなわなかったかもしれません。そう考えると、再びモモと暮らせたことは感謝の気持ちでいっぱいです。
もちろん愛猫が脱走しないことに越したことはありませんが、災害時などの予想が及ばない状態では可能性はゼロではないですよね。猫と離れ離れになってしまったとか、そうなった時の対策としてこの記事が何かのヒントになれば嬉しいです。
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