それはお盆休みが始まってすぐのことでした。
お盆休みは実家に帰って過ごすのが毎年の恒例行事。今年もいつものように実家に帰り、寝る時間になると自分の部屋へ。
しかし、思うように眠れません。そのままベッドで過ごしていたら、気が付けばすでに午前2時。
早く寝ないと……。
そう思っていたら、あることに気づいてしまいました。
聞きなれない金属音
シーンと静まり返った空間の中にかすかな音がするのです。
シャリーン、シャリーン。
それは金属がこすれるような音です。けれども、今までに実家にいても聞いたことはありません。包丁を研ぐ音に近い気もするのですが、夜中にそれは考えにくいですよね。
いったい何の音なのか。わからないだけに不安がつのります。
恐怖に妄想がとまらない
耳を澄ましてみるとどうやら家の外から聞こえてくるような気がします。
そう思った時に、頭の中には二つの可能性が浮かび上がりました。
現実的な可能性の場合
まず思い浮かんだのは泥棒が侵入しようとしているのではということでした。
実家に入ったところで盗られるようなものは何もありません。けれども、何が原因で犯罪に巻き込まれるかわからない時代です。
誰かが玄関のピッキングをしようとしているのではないか。窓ガラスを割ろうと工具を準備している音ではないか。
考え出すとどんどんと悪い方に考えが傾いていきます。
現実離れした可能性の場合
あまりに恐怖を感じたためでしょうか、絶対にあり得ないようなことまで頭に浮かんできました。
鎧武者が刀を抜いた音?
昔の2時間ドラマにはこういうシーンがありましたよね。洋館に飾ってあった鎧の中に犯人が潜んでいて、ターゲットが近づくや急に刀を振り回すなどということが。
ドラマや映画の世界ならまだしも、今の世の中で現実に起こるとは思えません。そもそも実家は洋館でも鎧を飾っているわけでもないですしね。しかし、そのような考えが浮かぶほどにその音は私に恐怖をもたらしたのです。
いつまでも音が鳴り続ける
このままでは眠れない!
そう思った私は、電気とテレビをつけてストレッチを始めました。家の中に起きている人間がいるとアピールをすれば、泥棒や鎧武者なら逃げていくと思ったからです。
それから10分。外からは相変わらずシャリーンシャリーン。
もう、これは外を確認するしかありません。そう思って窓を開けてみることに。
シャリーン、シャリーン。
どうやら音は隣の家から聞こえてくるようです。
シャリーンシャリーンの正体
褒められた行動ではないのですが、音の正体を確認しようと思って隣の家のベランダを見てみました。そこで、ようやくわかりました。
これだったのか!
皆さんはもう何の音だったのかお気づきでしょうか?
そうです。風鈴の音だったのです。
風鈴の音自体はとても涼やかで、猛暑の時期に聞くととても心地よく感じますよね。それなのに、そこに風鈴があると知らずに音を聞くとこんなに恐ろしい音に聞こえることに驚きました。
そして、風鈴だとわかったとたんに「シャリーンシャリーン」と聞こえていたものが「チリンチリン」と聞こえるようになりました。人間の耳は意外といい加減なものですね。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」といいますが、今回の私のような状況を言うのでしょう。警戒をするのは良いことですが、度を越してしまうと恐れが恐れを呼ぶことに。恐怖心にとらわれた時には何か行動を起こしてみることも大切ですね。