先日、地下鉄に乗る機会がありました。その時、昔に地下鉄で体験したある出来事をふと思い出したのです。
不審な男
それは今から20年以上も前のこと。私がまだ大学生の時のことでした。地下鉄で通学をしていたのですが、その帰り道に不審な男の人がいることに気づいたのです。
その男の人は、地下鉄の電車内でなぜか私のことをちらちらと見てくるのです。一瞬ほど横目でこちらの様子をうかがうと、すぐに視線を外します。一度で終わればいいのですが、それが何度も繰り返されるのです。その時の気味の悪さと言ったら、言葉では言い尽くせません。
その時、私はとても急いでいました。乗り換える駅で真っ先に改札を通りたい。その一心で、途中の駅で止まるたびに電車を降りては先頭車両に向かって移動。扉が閉まるベルの音がすると、再び電車に乗り込むということを繰り返していました。
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あと一駅ほど我慢すれば不審者とは別れられる…
それだけを頼みにして、我慢すること2分。次の駅の扉が開きました。
一瞬たりとも不審者と一緒にいたくない私。扉があくやいなやホームに飛び出しました。
不審者はどこまでもついてくる
駅のホームで
ホームで先頭車両に向けて早歩きをしていると、驚くべきことに気づいたのです。
不審者が私についてきている!
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その男は常に私の周りを移動しているのです。
いや、そんなわけはない。私につきまとったところで不審者になんのメリットもない。たまたまその男はこの駅で降りる人だったのだろう。
そう思い込むことにしました。そして、発車前のベルが鳴ったので電車に乗り込むと、その男が車内にいたのです。
次の駅のホームで
次の駅に止まって私が扉から出ると、その男もホームに降りていました。私が先頭車両に向かって進むと、その男も同じ方向に歩いていきます。
これはどうにかしなければいけない。そうだ。その男についてこられないように、私が後ろを歩けばいいのだ。
私が後ろを歩くと、その男は最初は普通に歩いていました。けれども、こちらを一度振り返ったのをきっかけにしてたびたび私の方を見るのです。ちらちらと振り返るどころではありません。思いっきり振り返ってはこちらをうかがうことの繰り返し。その後、男は前方へと走りだして雑踏の中に消えていきました。
これで安心だ。
私は、再び発車のベルにあわせて地下鉄に乗り込みました。
ところが、そこにはやはり例の男がいたのです。もう、恐ろしすぎてどうしたらいいのかわかりません。
次に電車が止まったら、ホームで駅員さんを探そう。そして、不審者に追いかけられていると助けを求めよう。
そのように覚悟を決めて、駅に到着するのをひたすら待ち続けました。
次の次の駅のホームで
「〇〇駅です」
車内放送が流れて、扉が開いた瞬間のこと。その不審者が先を争うように扉から外に出て行ったのです。
私はこれまでと同様にホームに出て、先頭車両を目指します。視線の先には不審な男が遠ざかる姿がしばらく見えましたが、やがては人ごみに紛れていきました。
不審な男の正体は?
そこでようやく私はその男の正体に気が付きました。
その男の正体とは……
不審な女につきまとわれていると思い込んで、ストーカーの恐怖に恐れおののく男
……だったのです。
おそらくですが、その男性も私と同様に、乗り換えがスムーズにいくように先頭車両に移動しようとしていたのではないでしょうか。その途中で、自分と同じタイミングで電車を降りたり乗り込んだりする私に気づきました。それで、つけられているのではと思ってこちらを気にしていたのが真相のような気がします。
忘れられない記憶
20年以上前のことなのに昨日の出来事のように私が書いているのはなぜかというと、いまだに悪い意味で忘れられない記憶だからです。
その人と私はまったくの初対面でこれまでに両者の間のトラブルなど一切なし。たぶん、その方は「変わり者の大学生が恋愛的な意味で自分に興味を持ってつきまとっている」という勘違いをされたのだと思われます。
その男性なのですが、年齢としては40代ぐらい。特別にイケメンというわけでもありません。当時大学生だった私が何を好き好んで自分の親ぐらいのおじさんにひとめぼれをしなければならないのでしょうか。ストーカーまがいにつきまとう行動をしたと思われたことがなんだか心に引っかかるのです。
これだけでは、私も最初は同様の勘違いをしていた身なのであまり強くは言えません。ただ、もう一つ引っかかることがありまして…。
それは、この男性が勘違いに気づくことなくその場を後にしていること。誰かにこの出来事を話して、「その大学生も先頭車両に乗ろうとしてたんじゃないの」という会話になっていればいいのですが、そう都合よくもいかないですよね。
私はこのまま濡れ衣をかぶったままなのかと思うと微妙な気持ちになります。そういう意味でこの体験は忘れられないのです。
自分の何気なくとった行動が、意味をはき違えて取られることが時に起こりますよね。この体験はそれの最上級と言っても過言ではありません。
皆さんも、私と同じような目にあわないようにお気をつけください。
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