2024年現在、町中を歩いていても猫を見かける機会はすっかり減ってしまいました。猫を飼っていない猫好きにとっては寂しい時代ですね。
けれども、昭和の時代には町のあちこちに猫がいました。野良猫はもちろんのこと、飼い猫も家と外を自由に行き来していました。そんな時代に我が家に野良猫が侵入したことがあったのです。
見知らぬ野良猫を発見!
当時の私はまだ小学生で、友達数人と居間で宿題をしたり遊んだりしていました。
すると、部屋の隣にある台所でバタバタと音がするのです。時間帯は夕方の5時ぐらいだったでしょうか。普段なら母親が夜ご飯の支度をしていてもおかしくはない時間ですが、その時はお風呂のお湯を入れてくると言ってそちらに向かった後でした。
このバタバタの正体は何なのだろう。母親でないとすればもしや泥棒なのでは?
それなりの年齢になった今ならば、少し離れた場所から様子を見守っていたことでしょう。けれども、当時は違いました。
その場に数人がいることですっかりと強気になった私たちは、台所へと向かったのです。抜き足、差し足、忍び足。気配を殺して台所を覗いて見ると、台所の調理台に一匹の猫がいたのです。
野良猫が狙った獲物とは
物陰から覗いていたはずの私たちの姿を、野良猫はいとも簡単に発見しました。野生の勘とは凄まじいものです。
じっとこちらを見つめて微動だにしない野良猫。お互いに様子見の状態が続きます。こちらが何もしないと悟ったのでしょう。猫は目をそらしてから身をかがめて何かを始めました。
それまで猫の体に隠れて見えなかったのですが、調理台には揚げたばかりの魚のフライがありました。その匂いに誘われて野良猫はやってきたのだと思われます。
この出来事のあった40年近く前は飼い猫も自由に家の外に遊びに行っていましたよね。我が家でも寝る時間までは玄関や掃き出し窓のアルミサッシに鍵をかけずにいました。飼っていた猫が自分で開けて出入りできるようにするためです。
その玄関の隙間から忍び込んだ野良猫は、夕飯になるはずの魚のフライを遠慮なく食べていきます。見ている場合じゃないぞ。ようやく我に返った私たちは猫を追い出すことに見事成功。魚のフライをくわえたまま野良猫は逃げ去っていきました。
魚のフライのその後
ところで、野良猫に食い荒らされた魚のフライの末路はどうなったかのでしょうか。
野良猫はかなりお腹が空いていたようで、残された魚の大半にかじりついた痕跡が残されていました。衛生面を考えてもとても人間が食べられたものではありません。普通ならゴミ箱行きとなるところです。
けれども、当時は我が家でも猫を飼っていました。油分の多い衣は取り外して、魚の身の部分はお猫様がしっかりと食してくれました。さぞやおいしい晩御飯となったことでしょう。こうして我が家で起こった猫の侵入事件は幕を閉じたのでした。
懐かしい思い出となる
家の中に見知らぬ猫が入ってくるなんて現在では考えられないですよね。しかし、かつては意外とあったのです。昭和の頃の猫事情を知っている方なら同じような体験をしたことがある人もいるのでは?
実際にこれが起こった時には困った出来事だとしか思いませんでしたが、猫を飼わない生活となった今では懐かしい思い出の一つとなりました。