大阪の人間というと皆さんはどのようなイメージを持っていますか? お店では値切り、もらえる物は根こそぎ持っていく。ケチというイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
実際にテレビのバラエティーなどではそのようなエピソードも多いですよね。
私は大阪で育った人間ですが、たくさんある大阪人はケチだというエピソードの中で断固として否定したいことがあります。
昔からの習慣なのです
以前、職場の忘年会で次のような話題になったことがあります。
大阪で新規オープンしたお店の前を通りかかったら、ずらりと開店祝いのスタンド花が飾られていた。すると、通りすがりの人がおもむろに花を何本か抜き取っていった。
帰りにまたその店の前を通ったらほとんどの花がなくなっていた。
お祝いに贈られたものを持っていくなんて、大阪の人はケチを通り越してなんとマナーが悪いことか。
その話題を出した方は転勤族で、大阪に来て一年目の方でした。だから、スタンド花が持ち帰られることに衝撃を受けたのだと思います。
その場にいた地方出身の方や大阪育ちの若手たちも、だいたいが同様の反応をしていました。
しかし、私は声を大にして言いたいのです。
大阪人が開店祝いの花を持ち帰るのは、早くなくなった方がそのお店が繁盛するって言われているからだ!
ケチだからでもマナーが悪いからでもないのです。昔からの習慣として脈々と受け継がれているのです。
持ち帰るのにも礼儀はある
大阪でも地域によるのですが、私が子どもだった頃(昭和末期)は、開店したお店の祝い花が早くなくなるとそのお店は繁盛すると言われていました。それだけ多くの人がそのお店にやってくるということになるからです。
お店の人もその話は知っているので、特に買い物をせずに花だけを貰いに行っても嫌な顔はされませんでした。小学生の頃に花をもらいにいったら、「たくさん持っていきや。」と店員さんに言われたこともありました。
しかし礼儀というものもあって、持って行っていいのはスタンド花などの切り花だけ。
鉢植えの胡蝶蘭などは持って行ってはいけないものでした。鉢植えを持ち帰るのは厚かましい行動なのです。
当然ながら、新規開店する前に花を持ち帰るのもマナー違反です。
誤解の原因は?
ところで、先ほどから私が過去形を多用していることにお気づきでしょうか? 実は、最近では祝い花を持って帰る人はかなり少なくなってしまったのです。
なんでかニャー
私は、次のようなことが理由ではないかと考えています。
昭和ぐらいまではお店と言えば個人商店が多く、その土地に住んでいる人間が地元に開くことが多かったような気がします。だから、お店の関係者は「祝い花が早くなくなると繁盛する」という話を知っていました。
けれども、平成に入ってからオープンする店は、企業が出店するケースが増えました。店舗運営の中心になる社員さんたちは、地元のことに詳しくない人もいます。
当然ながら、その人たちは祝い花と繁盛の因果関係の話を知る由もありません。せっかく開店祝いをもらったのに、大阪人が勝手に持って行ったとなるのです。
地元民としては昔からの習慣として花を貰っただけなのに、マナーがわるい呼ばわりをされてしまう。そのため、だんだんと廃れていっているのではと思います。
そんなつもりじゃニャいのに…
この習慣は絶滅への道をたどっていて、やがては知る人もいなくなるのでしょう。でも、愛すべき地元の習慣が誤解されて悪く言われるのは非常に残念です。何かの縁でこの記事を読んだ方は、「大阪人が祝い花を持っていくのは、そのお店の繁盛を願うことが始まりだ」と頭の片隅にでも置いていてくれたら嬉しいです。