若い頃、サッカーを観るのが好きでした。日本代表の監督でいうと、ジーコ、オシムあたりだったでしょうか。
その時代に、自分がサッカーチームを作るならとお遊びで考えたことがあったのです。現役選手で考える場合もあれば、芸能人やドラマの人物の性格がFW向きではなどの想像全開のパターンもありました。
その時の想像パターンの感覚で、童話・昔話から選抜したサッカーチームを作ってみました。予定よりも長くなったので、今回はFW・MFのみを記事にしようと思います。
読んだところで暇つぶしにしかならないし、童話・昔話についても記憶違いがあるかもしれません。それでもいいという方のみお付き合いください。
FWの2人を考えてみた
FWは点を取るのが仕事の超攻撃的プレーヤー。今回は高さがあるタイプとスピードタイプの2人を選びました。
一寸法師でポストプレー

一寸法師はわずか身長3センチ。お椀の舟と箸の櫂(かい)で京都を目指します。その体格で、大阪から川を何キロもさかのぼるのはとても大変だったはず。体力は並外れていると言えますね。
京都のお屋敷で働きだした一寸法師は、その家の姫とお宮参りの途中に鬼に遭遇します。しかし、一寸法師の活躍もあって鬼は逃げていきました。振れば願いがかなうという「打ち出の小槌(こづち)」を残して……。
「背、出ろ! 背、出ろ!」
打出の小槌を振って、一寸法師は180センチ以上もの体格を手に入れました。もともと体力も上昇志向もあったのに、さらに身長まで手に入れたのですから恐れるものなど何もありません。相手チームのDF陣にも競り負けないでしょうから、最前線で活躍をしてもらいましょう。
ガラちゃんのスピード

ガラちゃんは、『やまんばのにしき』という東北の民話(もしくは、それを基にした童話)に出てくる山姥(やまんば)の赤ちゃんです。
この子は並外れた身体能力の持ち主なんですよね。山頂にある家から麓(ふもと)の村まで縦横無尽に飛び回ります。それだけではありません。ある時は山姥の家に来たおばあさんを村まで送りとどけたり、ある時は食事用にクマを捕まえて家まで運んだりと力強さも持ち合わせています。
しかも、これらはガラちゃんが生まれてから一か月と経たないうちの出来事なのです。皆さんは信じられますか? 人間の世界の感覚だとあり得ないですよね。
わずかの時間で山頂から麓まで移動するスピードと、地上も上空も制する力。そして、生まれて間もないのにそれだけの身体能力を持っているという将来性。やがては誰しもが恐れる点取り屋になるだろうことを願って、試合に使いながら大切に育てていきたいものです。
MFの4人を考えてみた
MFは中盤で攻守に活躍するプレーヤー。中盤には知恵で最大の結果を導きだせるような人がいいかなと思うんですよね。けれども、敵を跳ね返すような強靭な人も一人は欲しいと思ったので以下のようになりました。
切れ者タイプのモルジアナ

モルジアナとは、『アリババと40人の盗賊』に出てくる召使の女性のこと。彼女はとにかく切れ者の一言に尽きるでしょう。
アリババにお宝を横取りされたと知った盗賊たちは、アリババを殺害しようとします。モルジアナはそれを素早く察知して、アリババの窮地を救うのです。
壺に隠れた盗賊たちの気配を感じて、熱した油をかけて根絶やしする。アリババの家に客として招かれた商人が、実は盗賊の頭であることを見破って、剣舞を披露するどさくさに紛れて突き刺す。
モルジアナはまだ若いのですが、なかなか肝が据わっていますよね。危険を察知する能力、一瞬での判断力、一撃で結果を出す能力などは彼女の右に出るものはいないでしょう。他のチームに渡したくはない人材です。
最大の結果を引き出す猫

ここでいう猫とは、『長靴をはいた猫』にでてくるあの猫のことです。親を亡くした三兄弟に残されたのは、粉ひき小屋とロバと猫だけ。その時に、三男が受け取った猫をMFに選出したいと思います。
「猫に何ができるの?」などと侮ってはいけません。知恵と策略を使って、自分の主人となった三男を盛り立てていきます。
三男は土地もお金も従者も持っていません。しかし、猫は、そんな彼をカラバ侯爵という貴族に仕立て上げます。そして王様に引き合わせることに成功! 三男と王様の娘はめでたく結婚することになりました。
自分の思い描いた通りの展開へと持っていき、ゼロから最大の結果を引き出すことは誰もができることではありません。また、三男と王様を引き合わせるために、コツコツと種をまくような努力家であることも評価ポイントです。猫には、中盤で試合をコントロールしてもらいたいです。
運だけではないわらしべ長者

わらしべ長者とは、観音様のお告げにしたがって大金持ちになった男のこと。最初に手にしたわらしべにアブを結んで歩いていたら、ミカンとの物々交換を頼まれます。それが反物になり、倒れた馬になり、最終的には大きな屋敷になりました。
物々交換の結果、ここまで価値の高いものに変わることはなかなかありません。わらしべ長者は、運を呼びよせる男なのです。スポーツで優勝するときには、チームにラッキーボーイのような存在がいますよね。彼にはその素質が備わっていると言えるでしょう。
しかし、彼は決して運だけの男ではありません。物々交換の途中で、倒れた馬を手にしています。この馬は瀕死の状態だったのですが、わらしべ長者の介抱によって元気に旅ができるまでになりました。おそらくは、馬がすぐに回復する見込みがあると思ったからこその交換だったのではないでしょうか。
自分が利益を手にするためには、相手に手の内を見せないことも重要です。わらしべ長者には、クレバーな一面もありそうですね。そのクレバーさで相手を出し抜くような意外性を発揮してもらいたいものです。
攻守の要に金太郎

金太郎はクマにまたがりお馬の稽古をしたことでおなじみですよね。クマに遭遇すれば、大人だって無傷では済まされないのが実情です。それなのに、子どもながらにしてクマの力を抑え込めるとは末恐ろしいです。
成長した金太郎は、坂田金時という武将になりました。酒呑童子という鬼が都に出没した時に、源頼光の右腕としても活躍したといわれています。大人になってもその怪力は健在ですね。
武将の家来となったのですから、組織の中で自分の役目を果たすということもしっかりと熟知しているはず。子どもの頃の野生児時代とは一味も二味も違うのです。
クマや鬼をも圧倒するパワーを持つ金太郎が、戦況を見て自分のすべきことを判断する力まで手にしたのです。チームにとってこれほど心強い存在はいません。ボランチの位置で攻守の要となることを期待しています。
DF・GKはまたの機会に
以上が、私が童話・昔話から選んだFW・MFです。なるほど納得と思った人もいれば、ちょっと違うなと感じた人もいるのでは? 皆さんも自分なりのチームを作って楽しんでみてくださいね。
最初にも書いたように、思った以上に長文になったのでDF・GKについてはまたの機会に書こうと思います。ご縁があればまた続きでお会いしましょう。
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