「この世で一番怖いものは?」って聞かれたらあなたはどう答えますか?
おばけや幽霊、地震や火事、身近にいる人間などなど。人によって切り口も異なるので、さまざまな答えが出てくるかと思います。
子どもの頃に怖かったもの
私は「水たまり」と答えていた時がありました。
たぶん「なんで?」って思う人もいると思うのですが…実はコレ、小さい頃読んだ絵本の影響なんです。そのお話とは……。
昔々、ある所に女の子が住んでいました。ある時、遠くの町まで用事があって出かけることになり、その際にカゴに入ったパンを相手に届けるように頼まれました。
目的地に向かう途中のこと。目の前には大きな水たまりが! 女の子は足を濡らすまいと思い、水たまりにパンを置きその上に乗っかったのです。すると、どういうことでしょうか。途端に足がパンにくっついて離れなくなり、グルグルと回転しながら水たまりの底へ…。
パンを踏んだ罰で地底の国に連れてこられたのです。反省の色無しの女の子は放置され、やがてお腹もペコペコ。でも足についたパンには手が届かずに、そのまま飢え死にしてしまいましたとさ。おしまい。
幼い頃の記憶なので間違いもあるかもしれませんが、だいたいこういうお話だったかと思います。
この話が怖かった理由
童話や昔話の中の登場人物は、「優しくて温厚な善人タイプ」か「欲深くて意地悪な悪人タイプ」のどちらかであることが多いですよね。善人タイプの人ならば、自分ならば地底に吸い込まれるはずはないとの自信があるので怖くはないのかもしれません。しかし、私はどちらかと言うと悪人タイプです。
もしこのお話の中に投げ入れられたら、きっとこの女の子に近い展開になるのではと思います。さすがに、足置きにするために水たまりにパンを置くということはないでしょう。しかし、こういう可能性なら十分あるかと思います。
いかに足を濡らさずに水たまりを通るかに気を取られる。 → 結果として、パンを落として泥だらけにしてしまう。 → しまった!どうしよう! → 猛スピードで駆けてきた馬車に泥をかけられたことにしよう。 → アリバイ工作に自分の服に泥をつけて、自分は何も悪くないかのように振る舞う。
私が物語の世界にいたら、きっとご褒美をもらう側ではなく罰を受ける側の人間であることに違いありません。だから、このお話を思い出すと女の子の運命が自分のことのように感じられたのです。
雨上がりに水たまりを避けて歩くのはもちろんのこと、トイレとかお風呂とかの水が流れる瞬間に一緒に吸い込まれるのではと密かに恐怖を感じる日々。そんなことはないとわかってはいるのですが。
今となっては、水たまりにおびえていたのは遠い昔のこと。でも、この物語を思い出すたびにあの頃の恐怖が一瞬だけよみがえります。子どもの頃の記憶って根強いものですよね。